Modulo Kineticに初めて触れる方向けのクイックスタートガイドです。Modulo Kineticは2Dまたは3D環境でプログラミングが行えますが、ここではシンプルに2D環境において、1台のデザイナーと1台のV-nodeを使い、デザイナーでセットアップした映像タイムラインが、V-nodeで出力できるまでを解説します。
システム概要
Modulo KineticはデザイナーとV-nodeの2つ装置で構成されます。デザイナーはプログラミング環境であり、全てのショーデーターを管理します。センサーの入力や制御プロトコル(DMXなど)はデザイナーから出力します
対して、V-nodeはあくまで映像コンテンツやオーディオ等を出力するための装置であり、プロジェクターなどに接続して使用します。デザイナーとV-NodeはIPネットワークを介して接続され、1つのデザイナーで同じネットワークに存在する複数のV-nodeを管理します。出力数を増やしていくためには、V-nodeを追加することで対応します。
Kineticソフトウェアの起動
Modulo KineticのハードはデザイナーとV-nodeの2つになります。それぞれのハードウェアは、ほぼ同じ仕様ですが、映像を出力するハードウェアとなるV-nodeの方が高いスペックを要求されます。ビデオキャプチャーカードもV-node側にインストールします。そのためグラフィックカードやストレージ、4Kマルチ出力などの仕様に基づいて、V-nodeは多様なスペックが用意されます。
2つのハードウェアをネットワークスイッチを介して接続し、マシーンを起動すると、Windowsのタスクバーにはドングルが認識されπアイコンを見ることができます。このドングルが認識され、それぞれのアプリが起動するまで、インターフェースは起動できません。
デザイナーを起動すると、新規作成か既存データのロードの選択が表示するので、Newを選んで新規作成をします。データ保存先をDドライブなど適切なストレージを選んで名前をつけて保存します。このショーデーターと同じフォルダーにメディアなども保存しないと、メディアを読み込むことができません。
ビューとレイアウト
Kinetic Designerのスクリーンは、数多くの機能を4分割された画面の中に、わかりやすくまとめられています。デフォルトでは、左上はプログラムした出力の状態をプレビューするスクリーンや3Dビューを表示することが多く、右上にあるエリアはリストアイテムが多く表示されます。左下はタイムラインやワープのための調整ウインドウ、右下のエリアは選択したアイテムのプロパティーが表示されます。
それぞれのエリアの下部にはそのエリアに表示可能なViewがタブで表示されており、それらタブを切り替えることで、そのエリアのスクリーン表示を切り替えることができます。
4分割されたレイアウト画面に表示する各種のビューは、上部にあるViewをクリックして表示されるリストから、必要なものだけをオンにすることができます。プロジェクトに合わせて不要なものをオフにすることで、画面を見やすく整理することができます。
Kineticには非常に多くの機能があり、それらはViewで分類整理されています。これらViewを必要に応じてオンとオフ(表示と非表示)とすることで4つのウインドウ内で十分に管理することができます。
画面のレイアウトは上部にあるWindowタブをクリックすることで、2D、3Dに最適化された構成に切り替えたり、ユーザー自身がカスタマイズしたレイアウトをワークスペースに登録することで、必要に応じてレイアウトを切り替えて作業効率を上げることができます。
Add Work Spaceを選ぶと、現在のレイアウトに名称をつけて保存することができます。
セットアップ (レンダーサーフェースの作成)
最初に右上のエリアにあるTabからRender Surface を追加します。これは映像などを取り扱うための空間(ピクセルワークスペース)です。このレンダーサーフェースは、出力に関連付けて使用します。このワークスペースを出力で切り取ることで映像をリアル出力にマップすることができます。
この解説では2出力を想定して、レンダーサーフェースのサイズは横に広い3840 by 1080で作成します。追加したレンダーサーフェースを選択し、右下のプロパティー欄にあるサイズを3840 x 1080に変更します。
プレビューエリアでは、Fitボタンで特定のレンダーサーフェースの全体表示を行うことができます。この中に映像が表示されるようになります。マウスのスクロールでズームインアウトが可能です。
メディアの追加
あらかじめ使用する映像などは、ショーデーターを保存したフォルダーに保存します。
右上のエリアでタブをMedia Listに切り替え、+ボタンでメディアの追加を行います。表示されるメニューからパターンを選択すると、テストパターンがリストに追加されます。追加されたテストパターンを選択し、右上のリストから左下のタイムラインにドロップすると、プレビューにはテストパターンが表示されるのを見ることができます。プレビューに表示されたパターンは選択して動かすことができます。右にスライドさせて左半分を空けておきます。再度、メディアタブに戻り、新規のメディアを追加します。
メディアタブを選び、+ボタンでメニューを表示し、映像コンテンツを分離格納するためのフォルダーを作成します。リストからFolderを選び、名前をつけて保存します。作成されたフォルダーを選択し、さらに+キーで次はMediaを選択、表示されるエクスプローラーで自分が保存した映像コンテンツを見つけ、読み込みたいコンテンツを全て選択して読み込みます。読み込まれた映像が新規作成したフォルダーの下に読み込まれてリスト表示されます。任意の映像を選択して、タイムラインにドロップすると、プレビューにはテストパターンと映像が表示されるのが分かります。スペースバーを押して、タイムラインをスタートすると映像が再生されます。
V-Nodeの追加とOutput設定
右上のメディアタブをV-Nodeに切り替え、実際の出力を行うため、V-nodeの準備をします。V-Nodeは+ボタンで追加されます。追加されたV-nodeの設定は下のプロパティー欄で見ることができ、ここでRender surfaceとの関連付けを行います
また、同時にレンダーサーフェースに合わせて、そのサイズもWを3840に変更しておきます。
V-Nodeの隣にあるOutputを+ボタンで2つ追加すると、V-nodeに対して物理的な出力が2つ用意されます。それぞれのOutputは選択するとプロパティーエリアで設定が行えます。それぞれの出力は、ピクセルワークスペースの特定のピクセル位置から、特定の大きさを指定することで、ピクセルワークスペースを二分する形になります。
Outputを選択し表示されるその設定の中、MAPのxとyがピクセルワークスペースの中の切り出し座標を決める数値で、出力1は0,0にし、その隣にあるwとhは切り出すサイズなので、1920,1080とします。次に下の行にあるOutは実際の出力エリア(リアル出力のピクセルスペース)であり、やはり座標位置は0,0とし、サイズを1920, 1080とすることで、ピクセルワークスペースの左半分を出力することになります。
次にOutputの2つ目を選び、Mapは横に1920ずらした位置から、1920,1080で切り出し、物理出力も同様にOutは1920オフセットした数値にすることで、ピクセルワークスペースの右半分を切り取ることができます。
V-nodeの接続
この時点ではまだV-nodeのIPは127.0.0.1のループバックアドレスであり、オンラインになっていません。デザイナー画面の最上部にあるメニューから、V-nodeを選び、リモートセッティングにより、実際のV-nodeがネットワーク上にあることを確認します。V-nodeのリモートセッティングを選ぶと、V-nodeのリモート画面が開き、ネットワーク上にあるV-nodeが左にリスト表示されます。
デザイナーPCとV-nodeのIP及びサブネットマスクが正しく設定されていれば、左端のリストには、実物のV-nodeが表示されています。表示はIP番号とともにソフトウェアのバージョンが表示されます。このV-nodeのバージョンと、デザイナーのバージョンが同一であることを確認してください。
V-Node のリモートセッティングでは、デザイナーPCから遠隔で、V-nodeハードウェアの設定を行うことができます。上部のタブを切り替えて、それぞれの設定を行います。コントロールタブでは、V-nodeのフルスクリーン(Start )とオフ(Stop)など、V-nodeの起動に関する制御、ハードウェアタブはV-Nodeのハードウェアの監視に利用でき、Deltacast タブはキャプチャーカードのモニタリング、そしてライセンスでは、V-Nodeのソフトウェアライセンスのグレードの確認などができます。
V-Nodeの初期セットアップで重要なタブは、General tabとGPUになります。ジェネラルタブにおいては、デザイナーから送られてくる映像コンテンツの格納フォルダーを指定できます。
GPUタブはV-Nodeのグラフィックカードをリモートで設定するためのタブです。搭載されたGPUにより、4または6のディスプレイポートアイコンが表示されます。これらディスプレイアイコンは、左端から1〜6のポートに対応しており、選択し、リストに表示されるEDIDを選択、Forced EDIDボタンでEDIDをロックすることができます。
ここでは2出力を行う想定のため、1と2のポートを1920×1080 60Hzで固定しています。
タブをEyefinjityに切り替えると、拡張スクリーンの設定になります。Create Eyefinityを選び、表示される2つのスクリーンを選択し、レイアウトを決めてOkをクリックすると横長のスクリーンを構築します。
V-Nodeのハードウェア設定が完了したら、Controlタブに戻り、左端に表示される実物のV-NodeのIPを確認し、このスクリーンを一度、クローズします。
スタートV-Nodeとオンライン
V-nodeタブにおいて、ターゲットのV-nodeを選択するとプロパティー欄でIP設定が行えます。ここで先のリストに表示された実物のV-nodeのIPを入力します。
再度、V-Nodeリモートを開き、スタートV-Nodeをクリックすると、左のリストにあるV-nodeのインジケーターが赤からオレンジに変化するのを確認できます。
リモートを閉じて、V-Nodeタブでオンラインを選択すると、デザイナーとV-Nodeがリンクされ、この瞬間に映像データは、デザイナーPCからV-Nodeへ転送されます。(Sync)
V-Nodeの表示はグリーンに変化し、オンラインであることを示します。映像コンテンツの転送が終わると、V-nodeに出力されたプロジェクターやモニターから映像が出力されます。
転送するファイルが大きい場合、転送完了まで時間がかかります。その間、V-nodeのリストにあるターゲットV-Nodeにはファイル転送中を示すサークルが表示されます。このサークル表示の間は、ファイル再生は行われません。
2D環境におけるセットアップについては以上になります。2D環境におけるマッピング(ワープ補正)などについては、補正だけを取り扱った解説ページでご紹介します。また、基本的にModulo Kineticは3D環境のプログラミングを想定してデザインされたソフトウェアです。3D環境のセットアップについては、下記のボタンをクリックして3D設定ファーストステップに進んでください。
Kineticデザイナーの学習と評価
Modulo Kineticはタイムラインベースのソフトウェアです。タイムラインの見た目は、クリエイターが利用する映像編集ソフトウェアなどのデザインに近づけており、誰もが馴染みやすいインターフェースになっています。
V-nodeの物理出力がなくとも、デザイナーの中だけでプログラミングは完結するため、学習目的、またはオフラインのプログラムなどの用途においては、2D環境だけのソフトウェアライセンスがオンラインショップで販売されています。
またもし、3D環境のプログラミングが必要な場合は、期間限定の2D/3Dフル機能が提供されるソフトウェアライセンスも販売されています。大型で高価なハードウェアを導入する前の評価、学習のためには、小さなコストでKineticデザイナーを試すことが可能です。ご利用になりたい方は、当社からの販売も可能ですので、ご相談ください。