歴史
目次
DALIプロトコル概要
DALIプロトコル開発の際の主要な要件は、下記の4点でした。
- 低コスト
- 配線の簡単さ、
- 個別制御、
- 照明器具からのフィードバック
この観点から、DALIは照明器具に個別アドレスを設定することができ、照明器具からの応答が受けられる双方向通信のシステムとして開発され、伝送レートが低いため、特別なケーブルの仕様は定義されておらず、設備における配線工事が簡単になるという利点を持っています。
DALIシステムに接続されるデバイスは3種類あります
- DALIコントローラー
- DALIバラスト(器具、電源)
- DALI bus電源
各デバイスには 0 ~ 63 の一意の短いアドレスが割り当てられ、最大 64 個の制御装置が制御できました。(DALI-1 ) これがDALI2になると、新たに 64 個の制御デバイスが組み込まれ、64個の器具、64個のコントローラーで1つのネットワークを構成します。アドレスの割り当ては、通常、すべてのハードウェアが設置された後に、DALIコントローラーからの「コミッショニング」プロトコルを使用してバス上で実行されます。データは、1200 ビット/秒の固定データ転送速度の 2 線式バスを介して、非同期、半二重、シリアル プロトコルによってデバイス間で転送されます。
物理接続
DALI機器の物理接続は自由なレイアウトが可能です。バス型のトポロジー、ディジーチェーン、スタートロポロジーなど、これらを組み合わせて使用することもできます。接続ケーブルの仕様に制限はなく、標準的な電気ケーブルが使用できます。
一般的には AWG 18 程度のケーブルを2本使用し(0.8 ~1.5㎟ ) 2本のケーブルをDALI Bus電源(一般的には16v出力) に接続します。DALIバスの電源に極性はなく、この2線をコントローラー、DALI対応LEDドライバー(器具電源)に接続するだけのシンプルなシステムです。2点間の最大距離は300m、最大許容電圧降下は2v
DALI対応の器具つまりDALI入力を備えたLEDドライバーと器具が一体化した製品などはAC電源に加えDALIポートがあり、DALIポートにDALIバスラインをつなぐことで通信ができます。DALI入力のコネクターについては特別な規定はなく、通常ターミナルブロックなどが利用されます。DALI対応器具などの場合、DALIポートのディジーチェーンができる端子などを備えており、そこから次の器具へ渡り配線でつなぐことも可能です。
これに対しDALI入力を備えないLED電源や照明器具などは、DALIコマンドを受信して、PWMまたは位相制御などで照明器具を制御可能なディマーなどを間に入れて制御をします。制御を行うためのコントローラーも器具同様にDALIバスラインに接続することで、DALIバスラインにある照明器具のすべてを制御することが可能です。
DALIプロトコルは、DALIコマンドをコントローラー側から器具側へ送信したり、器具側から返答をコントローラーに返して通信します。これら通信は、DALIバス上をマンチェスター符号化されたパケットを流すことで行われます。DALIのLow レベル(アクティブステート)は電圧9.5v以下と定義されており、またHIght レベル(アイドルステート)は9.5v~ 22.5vの間と定義されます。(通常16vが使用されます)
DALIコマンド
DALI コントローラは、必要な変更が行われるたびにパケットを送信します。 そのコマンドパケットは特定の器具(アドレス)へ向けた送信、ネットワーク全体へ送信するブロードキャスト、グループに対するコマンド、シーンをトリガーするコマンドなどの種類がありますが、送信されるパケットを簡潔に表記すると下記のような構成になります。
パケットの最初の部分はフィクスチャのショートアドレスです。 (メッセージをブロードキャストしている場合を除きます) 2 番目の部分はコマンドのタイプで器具に何を実行させるか命令が入ります。最後の 3 番目の部分は値です (これは常に必要というわけではありません)。 これにより、コントローラは同じ構造を使用して、レベル、検出、クエリなどの膨大な数の異なるコマンドをデバイスに送信できるようになります。
コミッショニング
DALIデバイスはそれらが正しく動作するよう、運用前にコミッショニング作業が必要です。DALIコントローラー(アプリケーションや制御デバイス)から、コミッショニングを行うことで、DALI器具にはショートアドレスが割り振られ、コントローラーとの間で双方向の通信を行うことができるようになります。
左図はPharosライティングコントローラーのDALIデバイスセットアップ画面ですが、DALI照明器具を制御する製品には、単に選択したデバイスを点灯するだけのボタンパネルなどのほか、デバイスにアドレスを設定できる他にシーンなどをプログラムできるソフトウェアなどがあります。Pharos製品はシーンプログラミングを主体にした製品になります。
DALIコンバーター(ディマー)などには独自でアドレス設定できるものもありますが、多くがシンプルなLEDドライバーなどのため、DALI器具は最初にアドレス設定が可能なソフトウェア等からコミッショニング作業が必要になります。
コミッショニング内容は主にアドレス設定のほか、グループ設定、シーン設定などがありますが、より細かくチェックコマンドを送信できるソフトウェアもあります。左図のPharosはアドレッシングとグループ作成、シーン作成が主な機能になります
16グループ16シーン
DALIデバイスは同じバス上に64台まで接続が可能です。またこの64のコントロールギアは最大16個のグループに分けて制御することが可能です。DALIコマンドは個別制御の場合、64個のコマンドパケットを送信する必要があるため、最大1秒程度の時間が必要になります。任意の複数装置を1つのグループに組むことで、グループに対して明るさとフェードタイムなどの情報を送ることができるため、個々の装置にそれぞれのコマンドを送るよりも、効率よく制御ができます。グループの設定などはDALIコミッショニングツールやDALIマスターとなるコントローラーから行い、グループ情報はコントロールギアに保存されます。最大16のグループ設定が可能です。
グループと同じくコントロールギア側に照明のシーンを保存することができます。マスターコントローラーからは、個々のデバイスにコマンドを送るのではなく、この照明シーンを呼び出すだけで任意の色や明るさに照明を変化させることができます。このシーンの最大数は16になります。
左の画面はPharosコントローラーにDALIインターフェースを追加し、ディスカバーされたDALIバラストをいくつかのグループに登録した状態です。DALIのグループに関する情報はデバイス側に保存され、コントローラーはグループ宛に明るさやフェードタイムなどのコマンドを送ることができます。同じグループ宛に送信されたコマンドは、そのグループに所属する器具全てに届き、同じグループの照明器具が同じコマンドで動作します。複数の照明器具をまとめて同じ明るさにしたい場合にグループは便利な機能です。
コントロールギア(照明器具)側に保存されるシーンは16シーン、DALIマスター(コントローラー)側からは、特定のシーンをフェードタイムを設定して呼び出すことで、保存したシーンが再生されます。これはコントローラー側がシンプルな押しボタンなどの場合に、非常に便利な機能ですが、DALIマスター(コントローラー)側で自由にシーンが作成できて、そのシーンを16以上に保存できる機能を有する場合は、照明シーン作成をコントローラー側で担うほうが制限のない照明プログラムができます。
DALI2について
DALI-2はDALI製品の相互互換性の向上を図り、DALiプロトコルの最新バージョンとして公開されました。 必須となる認証試験を通じて異なるメーカーの製品間での相互運用性が向上します。旧バージョンと異なり、DALI2では、より詳細な仕様と専用のシステム記述が含まれており、システムの電気的許容差はより正確な仕様になっているため、誤動作や誤解が発生しにくくなります。
DALI-1とDALI-2で大きく異なる点は、認証の範囲に照明器具だけでなく、センサーやコントローラーなど制御デバイスもその対象に含まれたことです。
- 1 必須となる厳格な認証制度
- 2 異なるメーカー、機器間の相互運用性の向上
- 3 制御デバイスの追加
2009年にDALIは国際標準としてIEC (International Electrotechnical Commission)により、そのコンポーネントに関してIEC62386の中で複数パートに分けて定義されています。Parts2xxsでは制御されるデバイス(照明器具等)についての定義です。これらコンポーネントについてはDALI1とDALI2で違いがあります。
デバイスタイプ(コントロールギア)
パート 201 ~ 209 では、DALI バージョン 1 から存在したコンポーネントを含む最新の規格であるDALI-2 に準拠したものが定義されています。旧来からあるハロゲンや蛍光灯などは需要が少なくなり、DALI2の規格ではサポートされなくなりましたが、現在の照明で一般的なデバイスタイプ6のLED、自己診断機能付きのエマージェンシーライトDT1、白熱灯のディマーDT4、アナログ0~10vへの変換DT5、リレースイッチのDT7などは主要なデバイスとなります。
DT8は、DT6と異なりLED器具ではありますが、単一の器具でRGBWなど4色やさらに6色などの機能を持つLEDが対象となり、カラー制御に特化したコマンドで制御します。そのためDT8 LED ドライバーは単一の DALI ショートアドレスを使用して色や明るさ、色温度などを制御することが可能で、DALIのチャンネルリソースの節約につながります。
コントロールデバイス
DALI2の規格から追加されたのがコントロールデバイスです。コントロールデバイスは入力装置とアプリケーションコントローラの2つに分類されます。アプリケーションコントローラーはまさにシステムのブレインとなる装置で、コマンドを送信できる製品になります。1つのマスターコントローラーを有するシステムとマルチマスターを有するシステムの両方が許容されます。
入力デバイスは、シンプルなスイッチや占有センサー、ライトセンサー、フェーダーなどの制御装置になります。IEC 62386スタンダードでは下記のように定義されています
D4i(DALI for IoT)
D4iはDALI for IoTの意味で、DALI2の拡張機能のための新しい認証です。DiiAはDALI2に特定の機能を追加したD4i認証を提供し、DALI照明器具のワイヤレス接続による外部ネットワークへの接続などを実現しようと取り組んでいます。
具体的にはD4i認証により、DALIドライバー製品はLED用電源以外に、DALIバス電源を内部に組み込むことがスタンダードとなり、さらにDALI バス電源で駆動するワイヤレスデバイス(センサーなど)の許容などにより、照明器具へのセンサーや通信デバイスの組み込みを容易にします。こうした制御と電源の要件に対応することで、D4iLEDドライバーは広範囲に点在する照明器具との通信を可能とし、照明器具の状態監視を実現したり、それらデータを保存したり報告したりする機能を有することが実現します。
将来的にスマートD4i照明器具は、組み込まれたD4i認証済みのセンサーや通信デバイスにより、外部から無線通信などで接続することで、スマートシティーにおけるIOTプラットフォームとして機能することが可能となり、器具のパフォーマンス監視だけでなく、保全管理、環境データーの収集などD4i照明器具で構成されるIoTの理想的な通信プラットフォームを実現することが期待されています。
D4iはDALI2認証プログラムの拡張であり、D4i認証されるデバイスには照明器具だけでなくワイヤレス通信機器やセンサーなどが含まれます。またD4iLEDドライバーには、新たな電源要件とスマートデータ機能に関する機能セットが求められます。
D4i 認証済み無線制御製品 Airglow
D4i認証済み 占有センサー
DALI+
DALI+は既存のDALIコマンドの通信をワイヤレスとIP通信をつかって行うことを想定した新しい規格です。これに基づいて、DALI Alliance は新しい DALI スタンダード「DALI Part 104 Changes & Additions-DALI」をリリースしました。 この規格は、DALI+ がさまざまなネットワーク伝送媒体を介して通信する方法を定義し、同時に DALI+ デバイスの認証によりDALI+ デバイスの互換性を担保します。